2012年02月14日

バレンタイン・デー!

 桜井です。
 今年も、素敵なバレンタインの贈り物をありがとうございました。
 拙作のキャラクターたちやライアーソフト開発スタッフ、さらにわたしにまで…。
 ありがとうございます!
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(今回も写真を撮ってもらいました)

 いつもいただいてばかりで…!
 今年は、わたしからも贈り物を用意させていただきました。
 ささやかなものですが…。
 お楽しみいただければ、幸いです。




ウァレンティヌスの日


●黒猫と鳥

「……あーもー疲れた疲れた!」
「ハッ! 第3層の仕事だからって気ィ抜くのが悪ィんだよ、莫迦猫」
「はいはい。嫌な鳥さね。3層の資産家のお屋敷守ってるのは大型の自動人形でした、
なんてだーれが予想できますかっての」
「ところでお前、さっきから気になってたんだが」
「なにさ」
「第1市民用の西享菓子屋に寄ってたろお前。裏口から。仕事じゃねーのに」
「うん」
「その手に持ってんのは、あそこで買った何かだな?」
「うん」
「何買ったんだ?」
「砂糖」
「砂糖だぁ? 莫迦お前それまさか天然物じゃねえだろうな!」
「いーの。嘴突っ込まないで」
「そんな高ェもん、人工甘味料で充分だろがよ!?」
「うっさい」


●アパルトメントの夜

「それでね、きょうはとっても特別な日なの。だからドクターには、あたしと、
アティと、ルアハから、贈り物があるの」
「そうか」
「喜んで貰えるといいのだけど…」
「心当たりがないな。別段、祝われる日でもなかったと思うよ」
「ううん、そんなことないのよ。きょうは、特別な日なの、えっとね、むかし」
「キーア。ワタシの感覚機(センサー)が動体反応を検知しました」
「え、あっ」
「アティがこのアパルトメントに接近しているようです」
「あっ、じゃあすぐ用意を、でも、ど、どうしよう、まだギーに説明…」
「説明の必要はないものと思います。キーア。ドクター、ワタシたちはこれから
ある作業を行います。作業の完遂にはドクターの待機が必要です」
「……僕の待機?」
「ただいまー。あ、ギー、いたんだ! よし、じゃあキーア、始めよっか!」
「ええ!」
「と言うわけです。ドクター」


●贈り物

「──随分、昔のように思います」
「お前の記憶か」
「記録です。記憶回路に残されるものは人間のそれとは些か異なっていますから、
断片化や美化といった海馬的整理をされることがありません」
「御託はいい」
「はい」
「それで。キーアは、その時、どうだった」
「彼女は、輝きでした」
「ああ」
「笑顔。記憶回路が砕けたとしても、忘れません。……ドクター・ケルカン。手を。
あなたの杖さばきは秀逸ですが、この先の階段は角度がきわめて非論理的です」
「俺も大概、ガタが来たもんだ」
「いいえ」
「糖分摂取は、お前の生体脳にも有効だったな」
「はい」
「巡回を終えたら飴屋へ行くぞ」
「……はい」


●大好きなあなたへ

「おいしいね、クセル」
「ええ、とっても。西享の甘いお菓子によく似ているわ」
「西享の?」
「甘いのだけど、ちょっぴり苦みがあって、でもまろやかな味わいなの。ブリートに
いた頃にはじめて食べたのだけど、あたし、とても好きになってしまって」
「小さい頃のクセルだね」
「うん。とても小さな頃。あの時は、あまりに好きすぎて、あたし…」
「食べ過ぎちゃった?」
「そうなの。そうなの! そうしたら、顔が熱くなって、鼻血がたくさん出て」
「鼻血が出るの!?」
「そうなの。血のめぐりがよくなりすぎてしまうんですって」
「それじゃあ、これも気を付けないといけないね」
「うん。でも…アスル、もうひとつだけ…」
「たくさん貰ったし、たくさん食べよう。でも、食べ過ぎには注意」
「(もぐ)」
「この先のナスの谷にも、似たようなお菓子を作るひとたちがいるって話だよ」
「たのしみ!」


●ロンドンからの手紙

『拝啓
 排煙に染まる霧に舞う煤が多くなる季節となりましたが、そちらは如何ですか。
 あたしも仔犬も変わらず元気です。ロンドンも変わりありません、と綴りたいところ
なのだけど、最近のここは、そうとも言えないかも知れません。
 ウォレス情報網というものをご存知ですか。
 幾つかの都市で試験的に敷設された、共通規格のエネルギーと情報のネットワーク
というものなのだそうです。不勉強なあたしにはよく分からないけれど、産業や生活、
人々の営みを助けるものだと聞いています。
 あたしが初めに思ったのは、あなたたちのことでした。
 モランが以前、特殊な何か、機械的な情報網のことを話してくれていたから。
 もしも件の情報網があなたたちに関わりのあることなら、今度、教えてください。

 同封したお菓子は贈り物です。
 ハロッズで美味しいお菓子を見付けたから、ぜひあなたにも。
 彼がこういうものを口にするか分からないけど…
 ううん、普段あのひとが何かを口にするのかさえよく分からないけど。
 もし、彼の気が向いたようなら…。
 ひとつか、ふたつ。渡してあげてください』


●新婚夫婦の場合

「やめろ」
「どうして、そういうこと言うの」
「やめろと言っただけだ」
「だから、どうしてそういうことを言うのかってあたしも言ったんです」
「考えればわかる」
「わかりません」
「……」
「わ か り ま せ ん」
「……だから、だな」
「なぁに?」
「子供にするように、その、あんと口を開けろというのは俺にとって」
「恥ずかしい?」
「……ああ」
「あたしだって、恥ずかしくない訳じゃない、です。カルにあーんとか……。でも」
「でも何だ」
「好きなひとには、しても、いいものでしょう? だってあたしたちって……、
ほら……ふ、夫婦、なんだし……」


●サムライと少女

「ハチ、ロウ。あの、ね」
「どうした」
「こ、れ」
「ん。これは……飴か? それにしてはつやが薄いな。もしやお前の國の食い物か?」
「(こくり)」
「そうか」
「たべ、て」
「ん。うん……甘いな。甘いが、ほろ苦く、しかし渋味とはまったく違う。日の本の
菓子の甘みとは異なって、なるほど。旨い。菓子だなこれは。英国のものか」
「(こくり)」
「旨かったぞ」
「(ふるふる)」
「そうだな。京に入ったら、まず、尾張屋へ行こう。菓子司だ。そこの金鍔が
大したものであると勝殿に聞いたことがある」
「?」
「佳いものを食わせて貰った礼にな」


●一輌だけの地下鉄にて

「あつっ」
「舌を火傷するよ。息を吹いて、冷ますといい」
「?」
「こう…」
「顔近いです。えっと、こう? ふー」
「そう」
「……んく。うん。おいしい」
「それは良かった」
「いつものも好きだけど、このあったかくてどろどろの、もっと好きかも」
「ホットチョコレートは気に入ったかい」
「おいしい」
「おかわりをどうぞ」
「んく……」
「飲んだ後は歯磨きを忘れずに」
「うん」
「こういった甘味の場合は、特に、念入りに」
「うん」
「僕が」
「いい」
「いや。僕が」
「ひとりでできるよ、歯磨きぐらい。いつもきちんとしてるもん。それよりさ」
「何だい」
「……あたしも、これ、作ってみたいなって」


 Wishing you a Happy Valentine's Day.



posted by 桜 at 20:45| Comment(0) | SS
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